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by Mizutamari (From Japan)
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RYAN ADAMS 「PRISONER」

 

 

現代アメリカを代表するSSW、ライアン・アダムスによる待望の新譜。多作なアーティスト

故に、常に何かしら作品をリリースしているイメージではあるが、Taylor Swiftのアルバムを

全曲カヴァーした1989を除けば、オリジナル・アルバムとしては2014年リリースの

セルフ・タイトルのアルバムRYAN ADAMS以来の作品となる。本稿を書いている時点

では、まだ本国アメリカにおけるチャートはまだ出ていないが、既に各国で好リアクションを

得ているようだ。英国では過去最高となる初登場3位をマークしている。

 

が。そんな事はとりあえずどうでもいい。本作の裏ジャケットに注目して頂きたい。

 

 

もう似たようなことを何度も書いているのは分かっているが、それでもDAG NASTYのTシャツを

堂々と着ているようなミュージシャンが作る音楽なんて、素晴らしいものに決まってるだろと

断言させてもらおう(笑)。

 

本作は、私にとっては大体12年振りくらいのライアン・アダムスの新譜である。過去作をずっと

スルーしてきた理由は既に拙ブログで述べた通りだが、去年実現した感動の単独来日公演を経て、

改めて向き合うライアン・アダムスの音楽は、あまりにも赤裸々で、ロマンティックで、男が男で

あることの悲哀、身を焦がすような愛が、痛みが、喜びが、哀しみが、彼にしか生み出せない

メロディと共に迫りくるのであった。このアルバムの内容が、マンディ・ムーアとの離婚という

人生経験が大いに影響しているというのは今更言及するまでもない事だが、そもそも創作活動と

日々の生活とが切り離せない関係性を保ち、完全に一体化しているようなタイプのアーティスト

だからこそ、このような音楽を生み出すことができるのである。

 

サウンド自体は、前作の路線をほぼ踏襲している形ではあるが、粘っこいハードなギター・リフは

割合控え目という印象。先行シングル"Do You Still Love Me?"くらいかもしれない。ドラムを除く

楽器演奏のほとんどをライアン自身が手掛けたとのことだが、クリーン・トーンのギター・プレイは

1989におけるアレンジで見せたスミス愛が滲み出ているような音作りだ。表題曲"Prisoner"

"Anything I Say To You Now"辺りは特に。"To Be Without You""Tightrope"​などの

フォーキーな佳曲もあるし、悲痛な胸の内が込められた歌詞が痛々しくも美しい"Breakdown"

"Broken Anyway"などは、アコギをメインにしながらも全体的にドラマティックなサウンド・

アレンジである。ラスト曲の"We Disappear"は、後半以降のほんのりサイケな展開のまま

フェイドアウトしていくので、ライヴだとジャム合戦になるのかな、なんて妄想してみたり。

ともあれ、全曲において嘘偽りの無い、42歳となったライアン・アダムスの"今"が刻印されて

いる作品と言えるだろう。

 

即効性のあるキャッチーな楽曲があるわけではないし、高品質ながら決して派手ではない作風

なのだが、本作のようなアルバムを味わって聴く喜びというのは、音楽狂としては贅沢な楽しみ

であろう。そういう風に思えるようになった自分自身を、私は嬉しく思う。本作を引っ提げた

来日公演、できれば今年中の実現に期待したいところだ。

at 23:11, 某スタッフ, Music(Recommend)

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The xx 「I See You」

 

 

2017年、実質的な最初のブログ記事は、今年初めて買ったCDについて書こうと思う(笑)。

 

The xx――彼らのパーソナルな面に関してそれほど興味は無いし、09年のデビュー作は

正直食い足りない、12年のセカンド作で「あ、凄く良い」となって、本作は迷わず購入した、

というのが私個人的なThe xxとの関わり方であった。同業者や評論家筋からの高い評価は、

一応把握はしているが、そのような事は私にはどうでもいいことで、そのミステリアスな

名前の通り、あたかも彼らの出身地であるロンドンにおいて、派手な喧騒が終わり、気怠い

沈黙がふと訪れる夜のような、そんな存在の彼らが生み出すサウンドが、今年最初に初めて

味わう2017年の音楽だという事、それこそが私にとって重要な意味を持つのだ。

 

このアルバム、一言で申せば、実に美しい音楽である。更に言えば、拙ブログでも何度

となく言及している、『アルバム』という1つのフォーマットを芸術品として捉え、

一貫した"ムード"を明確に感じ取れる作品なのだ。レコードで聴こうが、CDで聴こうが、

MP3で聴こうが、その本質が揺らぐことはないだろう。彼らが鳴らしている"美"は、決して

主張し過ぎることはなく、かといって弱々しいものではない、という絶妙のバランスの上に

成り立っているのだ。特徴的な男女のツイン・ヴォーカルは、過去作以上に濃密に絡み合い、

この手の音楽にありがちな雰囲気重視だけの代物とは一線を画す存在感がある。何か物凄く

新しいトラックを作り上げている、というほどではないのだが、ノスタルジーと新鮮味が

交互にせめぎ合うようなサウンド・テクスチャーは、同時代的なインディー系のR&Bで

あったり、トリップ・ホップ的なサウンドからの影響、エレクトロニカ、アンビエント

……などといった表現を超えた、現代的なポップスとして機能していると言えよう。

とはいえ、日本盤のライナーに書いてあったような、メインストリームの音楽における

ジャンルのクロスオーヴァ―が云々といったような評論は、10年代も後半に差し掛かった

今になってまだそういう事を書くのだなあ、と何とも言えない気持ちにはなったが(苦笑)。

90年代からずっと同じようなことを言ってないか?っていう。時代の空気と結びつける

評論というのは当然あって然るべきなのだが……勿論批判ではなく、単なる感想である。

繰り返すように、ライターなんぞをやっている身ではあるが、極東の音楽狂としての私には、

そのような周囲の評価などはどうでもよく、常に興味があるのは音楽そのものなのだ。

The xxというバンドが生み出す音楽そのもの、その素晴らしさ、その美しさを、なるたけ

素直な気持ちで味わうこと。それが私にとっての最もたる関心事なのである。

 

今作において過去作との違いを述べるとすれば、1曲目"Dangerous"の冒頭から伝わる

一種の高揚感であろうか。単に明るくなったとかそういうことではないが、良い意味での

メジャー感が出てきたのだろう。その感じを嫌がるリスナーも在るかもしれぬ。それは

好みの問題なので良いも悪いも無いのだが、ともあれ、まだ数回しか聴いてない本作を

私はとても気に入った。現時点では、THE CURE的なリフも導入された"Replica"辺りが

特に気に入っている。ミニマルながら独特の存在感を放つベース・ラインもNW的で良い。

結局、こういうのに弱いんだなあ(笑)。

 

蛇足だが、本作は押し付けがましい主張は無い故に、日常のどんな場面のサウンドトラック

にも成り得る作品ではあるが、まずは腰を据えて、じっくりと本作の"ムード"を味わうのが

良いだろう。それは情報過多を通り越して、己の感性すらネットの評価、他人の呟きに託して

しまうような現代において、とても贅沢な時間となるはずだ。そういうアルバムである。

 

 

at 01:48, 某スタッフ, Music(Recommend)

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PLACEBO 「A Place For Us To Dream」

 

 

そもそもオリジナル・アルバムはもとよりOnce More With Feeling Singles 1996-2004

も所有しているし、買う意味無いなあ……などと思いつつ、リリースされたのは知っていたが、

つい最近までスルーしていたプラシーボの3枚組ベスト盤。なのだが。

 

『日本盤のみ東京・赤坂BLITZ来日公演のライヴ音源を収録したボーナス・ディスク付き』

 

とかいう煽り文句を目にした瞬間にワンクリしておりました(笑)。

 

件のプラシーボの単独来日公演を観たのは2010年の話で、もう6年前なのかと思わず遠い目を

したくもなる。その前年にはサマソニで8年振りの再来日を果たし、日本における需要というか、

熱心なファン層を目の当たりにして、バンド側もかなり満足していたように見受けられたのだが、

結局現時点での最新作Loud Like Love(2013年)は、またもや日本盤リリースは実現せず、当然

ながら来日もしていないという、何だかバンドと日本との関係が振り出しに戻ってしまった

ような雰囲気の中、こうしてベストとはいえ日本盤がリリースされたのだから、再来日実現の

期待を込めて購入した、というのが個人的な想いとしてあったのも事実ではある。

 

時系列というわけではなく、ランダムに並んだ楽曲群に改めて触れて痛感するのは、PLACEBO

というバンドの特異性、決して売れ線ではないのに耳に残るメロディが常にあり、妖艶な美が、

アウトサイダーとしての誇りが、効果の切れることのない偽薬、プラシーボという名の毒として

存在し続けているという事実である。限りなく英国的でありながらも、多国籍のルーツを持つ

ブライアンとステファンだからこその、何処にも収まることのないサウンドであるというのは

改めて重要視すべき、というか私自身そう再認識した次第である。

 

選ばれた楽曲は、1STから4THまでの曲は上述した過去のシングル・ベストとほとんど被って

いるが、RADIO EDITバージョンなど、若干のバージョン違いで収録されていたりする。

初期名曲"36 Degrees"は2016年新録バージョンとなっており、もろに90年代オルタナ色満載の

疾走系ナンバーだった原曲とはかなり趣を変えて、スロウ・テンポで情熱的に歌い上げている。

ノイジーなギターはちゃんと入っているのでご安心を(笑)。あ、でも"Twenty Years"が収録

されていないのは何故なんだろう? 今年でアルバム・デビュー20周年なのに(苦笑)。

新曲として収録された"Jesus' Son"はここ数年のプラシーボ楽曲に見られる、明るめの

曲調のナンバーだが、今まで以上に歓喜というか祝福された光のようなものが、全編渡り

感じられるのが興味深い。シングルのジャケットにはブライアンの息子さんが採用されている

とのことで、さもありなん、と言うべきか。まあ、それでも何処か妖しさが漂ってしまうのが

プラシーボたる所以というか何というか……。

 

マルチ・プレイヤーでベースのみならずギターもかなりの割合で弾くステファンは勿論のこと、

ブライアン(彼もマルチ演奏者だ)もギタリストとして優秀な、というかユニークなセンスを

持った人で、正しく"オルタナ世代"と言える名演を多く残していることにも注目されたい。

センセーショナルな部分だけでなく、そういったプレイヤーとしての素晴らしさがあり、

才能とセンスが直結した素晴らしい楽曲群を残してきたからこそ、彼らは激動の20年間を

駆け抜けることができたのだろう。来日公演ではその若さとタトゥーの多さでキャラもかなり

立っていたスティーヴ氏(Dr)も去年脱退して、以降は新ドラマーは入れずに核となる2人だけで

活動している今のプラシーボが、この先どうなっていくかは分からないが、20年彼らの音楽を

聴き続けている身としては、新譜が出たら必ず買うし、しつこいようだが再来日実現の日が

訪れることを期待して待ちたい。キャリアを総括したベスト的なライブとか、超観たいよ(笑)!!

 

 

 

 

あー。最高過ぎる。

 

 

 

今年のスタジオ・ライブ映像。1曲目から"PURE MORNING"とか最高過ぎる(しつこい)。

at 23:25, 某スタッフ, Music(Recommend)

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Too Close To Touch 「Haven't Been Myself」

 

 

そろそろBUCK-TICKの新譜について書かないと……などと思いつつも、今夜は先月リリース

されたこのアルバムを紹介したい。

 

このバンド、以前当ブログにおいても期待の新人として紹介済みなのだが、去年デビュー作

となるNerve Endingsをリリースし、今年早くもセカンド・アルバムHaven't Been Myself

発表という、ハイペースな創作活動が何とも頼もしいのだが、肝心の本作の内容……これが

実に良い。自分たちの鳴らすべき音がより明確となり、信念と必然とが分かち難く結びついた

サウンドとなっているのだ。

 

先行で紹介されていた"Sympathy""What I Wish I Could Forget"を聴けば分かる通り、

10年代以降の、美麗な歌を前面に押し出したポスト・ハードコア的サウンドという前作の路線を

踏襲しながらも、よりメロディに磨きをかけて、バンド・アンサンブルも細かい部分まで練り上げた

跡がはっきりと聞き取れる。サウンド全体のテクスチャーに気を配り、雰囲気で流してしまいがちな

ところも、ダレることなくきっちり仕上げてきた印象である。

 

PV映像を観る限り、かなり太ってしまったことが気になるが(笑)、フロントマンKeaton Pierce氏の

疑いようの無い才能を感じさせる歌声を軸に、いかに彼の声を活かした楽曲を作り上げるか? という

点を最も重要視した作品であることは間違い無いし、それは確実に成功している。前作以上に。

"Translate"では途中、いかにも今時なヘヴィなリフを盛り込んでいるし、"Miss Your Face"における

アコギの使い方もなかなか効果的。バンド・サウンドと言うよりは、アンビエント風のトラックで

全編貫いている"The Art Of Eye Contact"にしても、ピアノのサウンドとテクニカルなギターの

フレーズとの対比がなかなか面白い"Inside Voices"にしても、何か奇を衒ったことをしてやろう、

といったような演奏隊の野心は一切感じられず、中心にあるのは常に悲哀を感じさせるメロディの

美しさである。メジャー・キーで歌うことは無く、ほぼマイナー調というのが素晴らしい。

 

無論、ミディアム・テンポの楽曲が中心で疾走するパートもほとんど無い、というスタイルは

どうしても全体的に似たり寄ったりになってしまうし、これぞというキラー・チューンが無いのも

事実ではある。あるのだが、6/8拍子のロック・バラードという王道の楽曲構成を持った"Eiley"

アルバムの幕を閉じる、というのは明らかにメンバーの意思が働いているものであって、彼らなりの

美学を感じさせるところに注目されたい。バラエティ豊かな楽曲を多く盛り込むのではなく、作品

全体の統一感を優先させたであろうことは想像に難く無いし、そういう意味では、アルバムという

フォーマットを大事にしているのだろう。少なくとも私は解釈した。

 

上述したヴォーカリスト、kEATON氏の表現力は前作から1年で更に向上し、それこそラスト曲

"Eiley"における絶唱、テクニックを超えた叫びは本当に素晴らしい。彼のヴォーカルに関しては

実に興味深いものがあって、10年代以降の流行り、WEEKENDやTHE INTERNETといった

インディ系R&B(これはヴォーカルのみならず、サウンドからも感じ取れるものだ)、THE 1975

などの現代的な英国ロックなどの影響を感じさせつつも、旋律や絶叫のスタイルは00年代前半の

スクリーモに先祖返りしたようなものである、というのが面白い。サーズデイやフィンチ、ユーズドに

セイオシンといった面々がデビューしてからもう10数年、にわかに『00'S SCREAMOリバイバル』

みたいな動きも出ているらしいという時点で隔世の感があるが、そういった流れを鑑みても、

彼のようなヴォーカリストは、そしてTOO CLOSE TO TOUCHというバンドは、これからも注目

すべき存在であろう。勿論、早い段階での来日実現にも期待したい。

 

 

at 22:37, 某スタッフ, Music(Recommend)

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ANOHNI 「HOPELESSNESS」




私の37年(そう、つい先日達してしまいました……)の人生において、言うまでもなく
ライブという現場は、ここ数年でめっきりその数は減ってしまったとはいえ、大きな
比重を占めているものである。後に伝説とされる公演や、貴重かつプレミアとなった
ライブも多く観てきたが、中でもANTONY & THE JOHNSONSことAntony Hegartyが
現時点で唯一日本で行ったライブ公演、「Antony And The Ohnos 魂の糧」に関しては、
その内容は勿論のこと、激レアなライブ(あれを単なるライブと言っていいのかどうかは
別として)という意味でも、トップクラスに幸運な体験であったと思う。

あれから6年という月日が流れ、アントニーはANTONY & THE JOHNSONSとしてでは
なく、ANOHNI(アノーニ)と名前を改め、"女性"として、新たな再スタートを切った。
本作が、その第一歩である。

本作の制作に至るまでの経緯などは、国内盤の岡村詩野女史によるライナーノーツを
読んで頂くのが一番いいだろう。インタビューも交えて、非常に興味深い内容となって
いるのだ。まず、ANTONY & THE JOHNSONSが生み出してきた音世界と本作とは、
根本的に違うところがある。ANTONY & THE JOHNSONSはアントニーの神秘的な歌声と
ピアノを主軸として、オーガニックで時にシンフォニックなサウンド・アレンジを主な
形としてきたが、アノーニと名前を変えて生み出された本作は、ハドソン・モホークと
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーというエレクトロ・シーンにおける鬼才2人に
よるサポートの元、全編エレクトロ・サウンドで構成されているのだ。ライナーを読む
限り、アノーニはメロディと歌詞に集中し、トラック・メイキングは先述した2人に
ほとんど委ねているとのことだが、静謐なANTONY & THE JOHNSONSの音に心酔
していた人達にとっては、もしかしたら戸惑いもあるやもしれぬ。私自身、先行で公開
されていた曲すら聴かず、ほんの少しだけの事前情報だけで本作に触れたので、勝手に
アンビエント風のトラックに、漂うようにアノーニの歌声が……などと想像していた
のだが、これほどビートの効いたトラックの上で、あの歌声が鳴り響くことにちょっと
した驚きを感じずにはいられなかった。

とはいえ、既に両者の楽曲のゲスト・ヴォーカルとして参加している過去があり、数多くの
客演をこなしてきたアノーニである。Current 93の作品にゲスト参加しているくらいなので、
電子音とアノーニの歌声の相性の良さは、既に証明済みであろう。実際、本作における彼女の
歌声は、より力強く、より艶やかである。オープニング曲の"Drone Bomb Me"だけでも、
本作が単なる音楽的志向の方向転換などではないことが、すぐに理解できるはずだ。
"4 Degrees"のように重々しいドラム・ビートが先導するような曲においても、トラックに
負けるどころか、アノーニの歌声とメロディは、恐ろしいほどの存在感でもって、我々の胸に
突き刺さる。直球のタイトルに彼女の強いメッセージを感じさせる"Obama"なんかは、
ドローン風の禍々しいトラックと共に、アノーニは得意のファルセットを封印して、全編に
渡り低音のメロディで歌い切っている。本来の音域のオクターブ下くらいだろうか、とにかく
強烈な印象を残す楽曲なのだ。

先に述べた通り、本作におけるアノーニのメッセージはかなりポリティカルなもので、
多重コーラスのサビが美しい"Watch Me"にしても、一聴しただけだと何処か可愛らしい
シンセ・ポップ風の"Execution"にしても、これまたタイトルからして穏やかでない
"I Don't Love You Anymore"にしても、短い旋律に激烈な想いを託した"Violent Men"
にしても、その歌詞とメロディに込められた怒りは相当なものである。"Crisis"
(曲後半、何処かM83風のアーバンなサックスが導入されるアレンジが新鮮!!)や
"Hopelessness"の、救いようの無い世界観に至っては、イギリス人であって、長年
ニューヨークで暮らすアノーニがこれほどの想いをアメリカに抱いているのか……と
衝撃を受けたほどである。ラスト曲の"Marrow"で歌われる恐ろしい皮肉だけ取れば、
すっかり今の現状に呆れ果ててしまったのではないか、などと勘ぐってしまう。

勿論、タイトルも含めてそれはある意味逆説であって、絶望の果てに辿り着いた新たな
始まりが、本作には在る。個人的には本作の中でも特に気に入っている楽曲である、
"Why Did You Separate Me From The Earth?"で歌われる壮絶な決別から生まれる
希望を味わうといい。後半以降のアノーニの絶唱があまりにも美しく、素晴らしい。
どのようなサウンドで料理しようとも、中心となるアノーニの歌声は、それ自体が
意思を持ち、それ自体で全てを決定付けるのだ。


ライナーに記載されたアノーニ自身の言葉によると、本作は"トロイの木馬"のような
もので、心地良い現代的ポップスの様式を持ったエレクトロ・ミュージックでありながら、
聴き込んでいくとその強烈なメッセージ性に気付くだろうと。実際、本作で紡がれる
彼女のメロディは過去最高に、ある種のポピュラリティを感じさせるものであって、
誤解を恐れずに言えば、ある意味キャッチ―(!)ですらある。天性の歌声に恵まれた
だけでなく、アノーニはメロディ・メイカーとしても非凡な才能を持っていることを、
私としては今回改めて思い知らされた次第である。

at 23:05, 某スタッフ, Music(Recommend)

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Mayer Hawthorne 「Man About Town」




メイヤー・ホーソーン。この人の音楽を聴いていると、いつでもゴキゲンな気分になれるし、
何よりこんな音楽を作って歌って演奏して日々を過ごすなんて、どれだけ楽しくて幸せなの
だろうな、なんて羨ましくなってしまう。2009年に名門Stones Throwに見出され、30歳
という年齢でデビュー作をリリースした遅咲きとも言える彼の才能は、4作目となる本作に
おいて、ますますその輝きを増していくかのようだ。個人的には同い年ということもあって、
幸運にもデビュー作からずっと彼の音楽をリアルタイムで接していることも含めて、正直、
贔屓にしている面もありますが(笑)、彼の音楽には年齢も人種もジャンルも関係の無い、
タイムレスな魅力があるというのは、今更ここで強調することもないだろう。

80'sモダン・ファンク趣味に振り切ったtuxedoでの活動を経てリリースされた本作は、
過去3作やタキシードの作品、それぞれの要素がバランス良く散りばめられ、レトロであって
新しくもある、というメイヤー・ホーソーンならではのサウンドになっている。先行公開
されていた"Cosmic Love"こそ、初期のヴィンテージなレトロ・ソウル風で1st時の作風に
回帰したのかな、などと私自身も当ブログで書いたが、全体的には70's~80'SなAOR風味の
音が随所に盛り込まれている。勿論、私にその手のサウンドを語る上で必要な音楽的語彙が
圧倒的に欠けていることは承知の上で書き進めていくが、いかにもアメリカン・ロック
テイストなギターのツイン・ハーモニーで始まる"Fancy Clothes"なんかは、ちょっと
今までにない雰囲気かも。ギター・ソロを導入した曲は今までにもあったけれど、
それらとも違った味わいです。その始まりの後、レゲエ調の楽曲へと移行するのも
渋いです。メイヤー氏得意のファルセットも冴えまくり。彼の歌声は、作品をリリース
する毎に、艶も説得力も増していくのが素敵ですね。

個人的に気に入ったのは"Love Like That"辺り。この曲も先行で公開されておりましたが、
80年代初頭の香り漂う楽曲アレンジとメロディがたまりません。日本盤ではこの楽曲の
タキシードREMIXがボートラで収録されているが、それもまた最高なんです。
是非、日本盤を買いましょう(笑)。

初期の彼の楽曲に見られた、ストリングスを使った瀟洒でクラシック・ソウルな
雰囲気の楽曲は"Get You Back"くらいで、ラスト曲"Out Of Pocket"で全編に渡り
盛り込まれているヒューマンビートボックスによるトラックなどの要素はあるものの、
ヒップホップ色も今回は(そういえば前作ではKendrick Lamarが参加していたし)控え目
といった感じではある。とはいえ冒頭で述べた通り、ジャンルを飛び越えた上で生まれる
楽曲の素晴らしさ、そのタイムレスな魅力こそが、彼の音楽の本質であるのだから、
あまりそういった比較などは意味を持たないのであろう。

本作は、タイトルも含めて彼の都会での生活で得た経験がフィードバックされていると
いう。それは一見華やかではあるが、孤独な面もあると彼は言う(日本盤ライナーに
そういったニュアンスの事が書かれておりました)。そんな移ろいやすい世界に身を
置きながらも、相変わらずナードな見た目はデビュー時から変わらずに、気の合う
仲間たちと好きな音楽を作る彼の持つ音楽愛がたっぷりと、こぼれんばかりに
詰め込まれた本作のようなアルバムが悪いわけがないし、そのダンディ、その理知、
そのバランス感覚、その確かな誠実さは、メイヤー・ホーソーンが掛け値無しの本物で
あるということを、如実に表すものであろう。

今年はサマーソニック、そして単独での来日も予定されているので、どうにか一回は
彼の雄姿をこの目で確認したいものである。

 

at 00:46, 某スタッフ, Music(Recommend)

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DEFTONES 「GORE」




私にとって、デフトーンズという存在は一際特別な意味があり、あだやおろそかに
できない、できるわけがないバンドの1つである。1997年にリリースされた彼らの
セカンド作Around the Furでデフトーンズと出会い、もう20年近く彼らの音を
聴き続けている私ではあるが、本作で提示されたデフトーンズの"今"は、やはり
美醜の境界線を破壊し、混沌の濁流に放り投げ、時に白昼夢のように揺蕩いながら、
確かな存在感を刻み込んだ、何処を切ってもDEFTONES節としか言いようのない
サウンドの魔力には、やはり抗えないのである。

とはいえ、裏を返せば何か新機軸があるというわけではなく、あえて言ってしまえば
ここ数作の作風を踏襲しつつも、時にエクスペリメンタルな、掴みどころのない空気感を
強めたような音であって、ファン歴の長い短いは関係なく、はっきりと好き嫌いが分かれ
そうなアルバムだろう。リード・トラックの"Prayers / Triangles"こそ、00年代以降培った
王道のデフトーンズ・サウンドで、静と動のダイナミズム、美麗なメロディが非常に分かり
やすい出来栄えではあるが、所謂キラー・チューンのような楽曲はほとんど無いというのが
私個人の印象だ。変拍子のリズムでヘヴィなギター・リフがうねる様な"Doomed User"
にせよ、前半はアンビエントなトラック、中盤から後半にかけて徐々に盛り上がりを見せる
"Hearts And Wires"にせよ、90年代的なギター・リフが印象深い"Xenon"にしても、彼らが
今まで生み出してきたサウンドの範疇内であって、もしかしたら古参のファンからは特に、
厳しい目に晒されるのではないか。勿論、初期2作の音を期待しているような人は、とうに
ファンを止めているとは思うが……。

全体的には、チノ・モレノ氏が課外活動で吸収してきたエッセンスがフィードバックされている
雰囲気が濃厚で、00年代のポスト・ハードコア的、またはISISなどのポスト・メタル的な要素も
随所に感じられる(特にギターの音に)。とはいえ、それらもデフトーンズが以前から持っていた
要素であるとも言えるし、そもそもポスト・ハードコア系のバンドは、デフトーンズに影響を
受けている連中が実に多い。これはファンの贔屓目ではあるが、新しい才能にも積極的に関わって、
刺激を受けるデフトーンズは実に純粋な音楽ファンである、という風にも取れるし、私はそんな
彼らの姿勢が大好きだ。勿論先人たちのリスペクトも忘れることはなく、国内盤のライナーを
読む限りだと、本作の幾つかの楽曲で使われているヴォーカル・ディレイは、モリッシー(!)の
ソロ作品から影響を受けて生まれたものだとか。そして何より、"Phantom Bride"における
ギター・ソロ。事前情報が無ければ、明らかにデフトーンズじゃない(笑)ソロに戸惑うこと
請け合いのこれ、何とアリス・イン・チェインズのジェリー・カントレル先生の手によるもの
なのだ。デフトーンズとアリス・イン・チェインズの邂逅……私のごとき90年代男からすれば
感涙せざるを得ないわけだが、ジェリー氏のレコーディングに立ち会い、チノ氏は涙を流した
そうです。そりゃそうだよね。

歴史的傑作White Pony(00年)がリリースされた頃、デフトーンズを評して、ヘヴィ・ロック界の
レディオ・ヘッドなどと言われていた事を思い出す。今も、革新的なヘヴィ・ロックバンドとして
評価を受ける彼らだが、そういった枕詞のような文言は、現在の彼らに対してはどうなのだろう、
と考える。00年代以降、それこそ革新的なヘヴィ・サウンドは多く生まれたし、恐らくそれらの
バンドの中で、デフトーンズに憧れている面々も多くいるだろう。2016年の今、デフトーンズの
サウンドは革新的というよりは、孤高なのである。数学的正しさすら感じる、疑いようのない
一個の芸術品なのである。デフトーンズとしか言いようのない音世界を深化させ、その高潔なまでの
美学が、ベテランらしい円熟が、今尚変わらない音楽に対する敬愛、そして畏怖が、彼らの音を凡百の
バンドとは次元の違う高みへと誘っているのだ。

私は自分にとってどんなに大事なバンド、アーティストであろうとも、究極的には、盲目的に愛する
ことなどは絶対にできない性質である、と自覚している。鳴らしている人ではなく、鳴らされている
音で判断する。それが昔から変わらない私のスタイルだ。それゆえ、本作を手放しに絶賛すること
などはしないし、優劣をつけるのなら、彼らのディスコグラフィにおいて、際立ったクオリティを
感じるわけでもない。それでも、デフトーンズがデフトーンズで在り続けている音であることも、
また事実なのである。それこそが、私にとっては最も重要なことなのだ。

アルバム・タイトルの「GORE」の意味は、各自調べてもらえれば分かる通り、何とも物騒な意味合い
を持っている。私(ゴア、と聞いて思い出すのはH.G.ルイス氏、というような人間です)としては、
ホラー映画などで馴染み深い言葉だ。ある種強烈な言葉と、アートワークの爽やかさとの鮮烈な
対比などは、バンド側も意図するところであろう。それは、彼らの音楽性にもそのまま当てはまる
ものなのだから。


尚、本作は故チ・チェン(B)氏が亡くなられてから初めての作品となる。ジャケットのアートワークも
そう考えると、未来志向を感じさせるものであって、何だか感傷的になってしまう……。


2/10(木) 渋谷クアトロ 〜 DEFTONES来日公演レポ。

at 02:32, 某スタッフ, Music(Recommend)

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Novembre 「Ursa」




先日の記事で予告した通り、無事我が家に到着しました(笑)。

結成は90年とかなり古く、商業的ベースとはまるで無縁のマイペースな活動を続ける
イタリアの至宝、Novembreによる最新作Ursa。先行で公開されていた楽曲は勿論、
本作で提示されている音世界は、アルバム・ジャケットのアートワークで表現されて
いる物全てが詰まっているかのようで、その悲哀、その慟哭、その美……全てが
Novembreの織り成す芸術的作品として成立しているのである。

1曲目"Australis"から7分越えの大作だが、彼らのような音楽的志向のバンドにして
みれば、特に驚くようなこともなかろう。先日書いた通り、ALCESTなどのブラック・
シューゲイズとされるようなバンド以降の、ポスト・メタル的な質感をそこかしこに
漂わせつつ、中心人物Carmelo Orlando氏による幽玄の美を体現するが如き歌声は、
今まで以上に浮遊している。中盤以降のタイトな楽曲展開から放たれる暴虐の叫びも
健在だ。Carmelo氏の兄弟であり同じく創設メンバーのGiuseppe Orlando氏(Dr)を含む
メンバーの脱退も、そこまで痛手にはなっていないようだ。あくまで音を聴く限りでは。

2曲目"The Rose"ではCarmelo氏による身震いするほどのデス・ヴォイスが炸裂。
長年活動を共にしているMassimiliano Pagliuso氏(Gt)の手によると思われる、非常に
テクニカルかつエモーショナルなギター・ソロも印象的。

アルバム全体を通して、ほぼミディアム〜スロウ・テンポの楽曲で構成され、スピード感
や疾走感などはまるで期待できない内容となっているが、そもそもこのバンドにそんなものを
求めている人はいないだろう。プログレッシブではあるが、過剰なドラマ性をギリギリの
ところで排除しつつ、アトモスフィリックでありながらも、雰囲気重視で芯の無い音とは
まるで無縁の、重厚なバンド・アンサンブルが実に見事で、Novembreというバンドの
絶妙なバランス感覚、全楽曲のソングライティングを手掛けるCarmelo氏の才能は、やはり
特筆すべき点であろう。

アルバムの中でも割合に激しく、疾走している"Annoluce"辺りでは、激しめのサウンド
だからといってデス・ヴォイスで一層ヘヴィに決めるのではなく、Carmelo氏による非常に
艶めかしいメロディにドキッとさせられる。先程述べた、彼のソングライティング・センス
におけるバランス感覚の良さはこんなところからも表れているのではなかろうか。中盤以降の
テンポを落としたパートから、激タイトな展開に雪崩れ込んで、流麗なギター・ソロの導入、
そしてラストの耽美的な旋律へと繋がる様は、やはり限りなく美しい。言い添えると、その
ギター・ソロはクレジットを確認した限りでは、スウェーデンが誇るベテラン・バンド、
KatatoniaのAnders Nyström氏(Gt)の手によるもの、とのこと。

ハイライトは、9分を超える"Agathae"であろう。在りし日のOPETH的な、ゴシック風の
クリーンなギターとメロディアスなベースが絡み合うイントロから、RHAPSODY OF FIRE
辺りを生み出したイタリアならではの、クサめなギターと勇壮なドラムが力強く鳴り響いた
かと思えば、変則的なギター・リフへと展開し、激へヴィなサウンドへと突き進んでいく。
僅かに歌パートもあるが、ほとんどインスト曲と言っても過言ではない曲で、デス・メタル
的なドラムスもここぞとばかりに暴れております。彼らがどの程度ライブを行っているのかは
知らないが、こういう曲はライブで体験してみたいものです。

彼らのようなバンドが志向するサウンドは、時に楽曲が同じような雰囲気に偏りがちであったりも
するのだが、本作はラスト曲"Fin"まで、全10曲、どっぷりとその世界観に浸ることができた。
OPETHやPARADICE LOST、ANATHEMAなどが比較対象として挙げられることが多いのは、
勿論仕方の無い事ではあるのだが、私としてはTOOLやISIS、DEFTONES(新譜出ました!!)
辺りを好む方々にも是非、この限りない美と哀しみに満ちた独創的ヘヴィネス、幻惑の闇を
知ってもらいたいと願う。

at 21:49, 某スタッフ, Music(Recommend)

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Suede 「Night Thoughts (夜の瞑想)」




2016年というこの時代において、スウェードが新たな黄金期を迎えようとしている……
そんな事を一体誰が想像できたか。勿論、バンド・メンバー自身も想像すらできなかった
であろうし、時に時代と添い寝して、時に時代に抗いながら、アウトサイダーとしての
誇りと共に、自身の信じる音楽を、高潔な美学を、その身に鎖のように縛り付けたまま、
復活を遂げたあの瞬間から、偶然は必然へと変化していったのであろう。

通算で7作目となる本作は、2010年代のスウェード、という意味では、言ってみれば
セカンド・アルバムと呼ぶこともできよう。事実、その優美なオーケストレーションに
せよ、妖艶かつダークな雰囲気にせよ、それこそdog man starを彷彿させる瞬間が
幾つもあるのだ。それは熱心なスウェードのファンであるならすぐに気付くことだが、
ドッグ・マン〜に関してはリリース20周年記念の際にアルバム再現ライブを敢行したこと
もあり、その経験が本作にフィードバックされているのではないか、と想像する。
それもより美しく、コンセプチュアルな形で。

ともあれ、本作において最も重要なのは、スウェードが、ブレット・アンダーソンが
拘り続ける『アルバム』というフォーマットへの偏愛的執着であろう。ブレット自身が
いかに曲単位ではなく、あくまで『アルバム』全体の"ムード"に拘っているのかは、
2011年にリリースされたソロ・アルバムBlack Rainbowsについて、当ブログで
取り上げた際に書いたことがある。その美学、その信念は衰えるどころかますます
先鋭化され、結果生まれた本作は、つまみ食いのような聴き方を容易に許さない、
夜の闇に妖しく揺らめく一個の芸術品となった。圧倒的スウェード、圧倒的英国。

繰り返すが、本作は最初から最後まで通して聴かないと、もっと言えば初回限定盤に
付属しているDVDに収録されたフィルムと合わせて味わってこそ、その本質が掴める
という類いの作品ではあるが、かと言って単なる雰囲気重視の、一貫性の無いふわっと
した自称アート作品などではない。曲それぞれの魅力あってこその、スウェードらしい、
見事なアルバム作品なのである。


以下、収録曲について、個人的見解を簡単ではあるが述べていこう。
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at 22:30, 某スタッフ, Music(Recommend)

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CONVERGE 「THOUSANDS OF MILES BETWEEN US」




前代未聞、ブルーレイ3枚組にして約16時間という恐ろしいヴォリュームの映像作品。
CONVERGEには、過去にThe Long Road Homeというキャリア初期のライブ映像を
収めた映像DVD作品がある(勿論私も所有している)が、あくまでハードコアという
言葉に絶対的価値を置くような人にとっては、恐らくその過去作品こそがコンヴァージで
あって、そもそもBlu-rayというメディアで映像作品をリリースすること自体、受け入れ
られないのではなかろうか。もとより、そんな風に考える人は、とっくにコンヴァージの
ファンを止めているとは思うが……。

上述したように、あまりにも膨大な収録時間の為、時間のある時に少しずつ観るように
していた私。本来的な意味でのハードコア・サウンドの何たるかなどは、まるで語る
ことなどできないが、コンヴァージという存在そのもの、彼らの作り出す音楽自体を
愛する身としては、あえてDVDではなく、ブルーレイで映像作品をリリースした彼らの
心意気は、やはり感服せざるを得ないのである。常に挑戦し続け、賛否両論あれど、
ストイックに自分自身の限界と戦い続けるコンヴァージだからこそ、成しえた作品だと
断言できる。歴史的名盤JANE DOE(01年)をリリースしてから10数年に及ぶ、彼らの
歩みを、戦いの歴史を収めるには、ブルーレイという大容量メディアでないと、更に
3枚組という形でないと、とてもじゃないが足りなかった、というべきなのだろう。

DISC.1は、現時点での最新作All We Love We Leave Behindをリリース時のライブを
フル・サイズで収録。最初から映像作品として残すこと前提のライブであったようで、
カート・バルー(Gt)によるミックス、凝ったカメラ・ワークも含めて、ブルーレイに
相応しい高画質&高音質でのライブが楽しめる。はっきり言って、彼らのようなバンドの
ライブ映像にこのクオリティ、ちょっとばかり戸惑いもある(笑)。ホーム・ビデオばりの
画質で荒々しい映像こそハードコアだろう、と考えている人には、最初に述べた通り、
耐え難いものがあるかもしれぬ。私としては、戸惑いもありつつ、新鮮な気持ちで
楽しめた。ラスト曲が"THE SADDEST DAYS"なのも泣ける。全員の表情もよく
分かるし、特にベン・コルラー(Dr)の満面の笑顔にはほんと癒される(笑)。無論、
そんな笑顔で鬼のようなドラム・プレイを叩き付けるのだから、最高なんです。

DISC.2と3は、2002年から2014年までの世界各国のライブ映像と、PV映像を時系列順に
収録。時折、イメージ映像みたいなものもインサートされ、単なる映像の寄せ集め、という
わけではない、CDは勿論、アートワークにせよ、アパレルにせよ、自分たちの名前を冠して
世に出す物は、どれも彼ら流の美学を詰め込み、芸術として昇華してきたコンヴァージの
基本的態度が、この最新映像作品にもはっきりと刻印されているのである。

日本のファンにとって嬉しいのは、かなりの割合で日本でのライブ映像が収められている
ということに尽きる。初来日から伝説のBEAST FEST出演時の映像、残念ながら私が初めて
彼らを観た05年のDOJO(ISISとMASTODONが対バン相手だった!!!)、07年の下北沢で
観たライブ
は無かったものの、09年の渋谷O-EASTでのライブ(BRUTAL TRUTHと
カップリング・ツアー)、12年の渋谷クアトロのワンマンはきっちり収められている。
東京のみならず、仙台公演なども収録されており、彼らがいかに日本でのライブを
重要視しているかがよく分かるので、ファン冥利に尽きると言わざるを得まい。
特に、2012年の渋谷クアトロのライブは、何とMCも含めてノーカットで本編から
アンコールに至るまで、丸々収録されているという優遇っぷり。彼らがあのライブの
出来を気に入っていたからではないかと想像するが、あの場所にいた1人として、
何だか物凄く誇らしい気分になってしまった。単純だとは思うけど。


CONVERGEというバンドは、神格化されてしまったが故に、ファンが抱く期待値の高さも
凄まじいものがあり、恐らくは、彼ら自身もある程度の葛藤はあったのではないかと想像する。
彼らの歴史における音楽的変遷については、私自身色々と思うところがあるので何度か
拙ブログでも触れたことがあるが、その時その時で彼らが提示してきた答えは、常に彼らの
誠実な熱意に裏打ちされたものである、と私は確信している。本作もまた然り。

ブルーレイが観られる環境であるなら、是非手に取って欲しい、強力な映像作品である。

at 00:58, 某スタッフ, Music(Recommend)

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