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by Mizutamari (From Japan)
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<< 4/7(金) TSUTAYA O-NEST 〜 ALCEST来日公演レポ。 | main | 4/9(日) After Hours'17 後編 >>

4/9(日) After Hours'17 前編

 

 

一週間経ってしまったが、鮮烈な、そして貴重な体験としてこれからもずっと記憶に

焼き付いて離れないであろうライヴ・イベント、AFTER HOURS'17に参戦してきたので、

ざっとではあるが、観たアクトについて全て書いていこう。

 

http://www.afterhours.live/ja/

 

●MONO

 

オープニング、即クライマックス。そう言い切ってもいいくらいに、およそ8年振りに観た

MONOのライヴ・パフォーマンスは、とんでもなく素晴らしかった。そうだよ、これだよ。

この轟音なんだよ。そんな事を今回連れ立った親友と、終演後に何度となく確認し合って

しまったほどに、私の知っている轟音POST ROCK(もうそんな乱暴な括りでは語れない存在

ではあるが、あえてそう呼称する)とはこういうものだ、と得心した次第である。

 

十分過ぎるほど大物である彼らだが、あえてオープニングに登場するというのが、実に

ダンディかつクールな態度であろう。前回観た時にはMCも一つも無かったし、まさにクールな

印象の4人だが、今回はお祭りということもあるのか、登場した時点で何だかリラックスして

いた雰囲気で、最初から笑顔も見せていた。美脚に視線を向けざるを得なかった紅一点の

Tamaki嬢による、イベント開始の簡単な挨拶さえあったのだから、きっとこの日を楽しみに

していたのは他ならぬ彼らであったのだろう。

 

私が彼らの音楽を聴いていたのは、実際のところ00年代の話(POST ROCK〜音響系を熱心に聴いて

いた時期自体もそう)なので、10年代以降の彼らが一体どのようなサウンドを鳴らしていたのかは

全く分からない。が、1曲目が"Ashes In The Snow"だったので思わずおお、と口走ってしまった。

セットリストを確認した限り、この曲以外は10年代以降の楽曲であったようだが、彼らは自身が

生み出し、磨き上げた基本的な音楽性から大きく外れることはなく、あまりにもストイックな

姿勢で、内に秘めたる情熱と共に、静寂と轟音を見事に操っているのだな、と感じた。

 

ギタリスト2人、Goto氏とYoda氏は座って演奏しているのが彼らの基本スタイルなのだが、特に

Goto氏はフェスならではのテンションなのか、何度も腕を振り上げ、時に立ち上がり、アンプに

向かってノイズを放出し、抑えきれないエモーションが、音に、立ち振る舞いに、全てに漲って
いたのである。

 

轟音の意味、アルペジオの美学、呼吸をすることさえ憚れるような緊張感、私が彼らのような音を

鳴らすバンドに望む全てが、此処には存在していた。但し、MONOの場合は静と動の方法論に決して

溺れることはなく、現実的な冷徹な視点が感じ取れるのが、耽美であったり夢想に逃げがちなこの手の

サウンドを鳴らすバンドの中でも、非常に独特であるなと思う。それでいて歓喜の光が垣間見える、

フィードバック・ノイズに包まれる幸福。好きな人にしか分からない、この感覚は、やはり得難い

ものがあるのだ。

 

小雨の降る渋谷の真昼間、イベントはまだ始まったばかりである。

 

●world's end girlfriend

 

こちらも私にとっては8年振りとなるライヴ。WEGのような音楽性でソロ・ユニット、というと

中心人物となるアーティストは黒子に徹するか(ライヴもやらない)、逆に全面に出てくるか、

といった2パターンがあるかと思うが、首謀者たる前田勝彦氏は確実に後者タイプなのだろう。

今回は、前回観たツイン・ドラム編成といったようなものではなく、オーソドックスなバンド

編成にヴァイオリン奏者とチェロ奏者(だったかな?)が加わっているといったものであった。

前田氏は立派にフロントマンといった雰囲気で、サムライ・ヘアーなロン毛も健在だったのが

個人的には嬉しかったな(笑)。

 

彼らに関しても、私はMONOとほとんど同じで、デビュー作から2010年リリース作品である

SEVEN IDIOTSまでしか聴いてないので、そこまでのイメージでしか語れないのだが……

今回ライヴを観て、正直なところ「?」と疑問符が付いてしまった。私がWEGの音楽で非常に

好きな、あの美と狂気が入り乱れた、毒気のあるファンタジックな音世界があまり感じられ

なかったというか……中原中也の詩の朗読も、私には全くピンとこなかった。好みの問題

でしかないのだが、8年前の感動を今も覚えていただけに、少々残念だったかも。

 

●THA BLUE HERB

 

今回、最も衝撃を受けて、最も感動したアクト。彼らの事は、日本のヒップ・ホップをほとんど

聴かない私ではあるが、昔、共に働いていた方(私より一つ年上で同じような音楽趣味を持つ)が

所謂アングラなヒップ・ホップを好んで聴いていて、アンチコンとかあの辺りの音を私に伝えて

くれたのだが、何より彼は熱狂的な熱烈なブルーハーブのファンで、やはり数回ほどアルバムを

聴かせてもらったことがあった。独創的なトラックに、独創的なMCが哲学的思想的ラップをする、

みたいな印象を持ったことは今も覚えている。もう10年以上前の話だ。

 

大体、私たちの世代でロック・サイドの人間が初めてラップなるものに触れたのは、ビースティか

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、またはラップ・メタルであって、その後EMINEMが登場して、

みたいなパターンが結構多かったように思う。日本に目を向ければ、スチャダラパー(というよりは

"今夜はブギーバック"だが)であり、ドラゴン・アッシュであったのかもしれない。言うまでもなく、

あくまでヒップ・ホップ畑ではない79年生まれの音楽人の回想であるが、私個人はEMINEM以降、

ヒップ・ホップという音楽ジャンルの作品も良いと思ったものはガンガン聴いていた。それはこの

ブログでも書いていることだが、それでも日本のヒップ・ホップを聴こうとは思わなかったし、

思えなかったのも事実ではある。そんな37歳もうすぐ38歳の私が、日本のヒップ・ホップの歴史

において最も重要な存在の1つであろう、THA BLUE HERBのライヴ・パフォーマンスに、これほど

感動できるとは。それが、何より嬉しい驚きであったのだ。

 

正直なところ、1MCに1DJという最小限のスタイルを20年貫き通し、今も最前線で走り続けるような

アーティストのライヴが、たとえそれほど詳しくない音楽ジャンルであっても、良くないと感じる

わけがないのだと、ライヴを観る前から私は考えていた。物凄いものを見せてくれる、新たな体験に

なる、長年のライヴ体験から生まれたそんな予感は、見事に的中したということだ。

 

純然たるヒップ・ホップのライヴというものに慣れていない人間の書くことなので事実誤認や誤解

も多くあるとは思うが、曲間の喋りですら、全てがライヴ・パフォーマンスであるかのような

BOSS氏のラップ、語りは、そんな私にも強烈なインパクトを与えた。言っていることに共感する

というのではなく、ミュージシャンとしての、MCとしての圧倒的な存在感、技量、好きでも嫌い

でも無理矢理振り向かせてしまうような、一流のパフォーマンスが、私の心を捉えたのである。

 

BOSS氏自身が述べていたように、"負けず嫌いが集まる"今回のイベント、弛緩した空気の中で

パフォーマンスするようなアクトはいなかったはずだが、それでも並のロック・バンド連中が

裸足で逃げ出すほどの覚悟が、40分という与えられた時間を1秒たりとも無駄にしてたまるか、

といったような気迫が、最も感じられたのもTHA BLUE HERBであった。既に大ベテランで

ありながらも、偉大なイノベイターでありながらも、常に挑戦者なのである。"楽器何一つ

弾けない代わりに メロディを凌駕する武骨な語り"と己のアイデンティティをはっきりと提示

しつつも、異種格闘技戦を望んで受けて立つ姿勢が素晴らしい。この熱量は、幾多の困難を

乗り越えて、今も生き残り、ステージに立ち、戦い続ける男だけが持つものである。それは

ジャンル云々は関係なく、彼らの音楽そのものにチャームされたわけではない、音楽狂いの私に

とっても、そんな男達が魅せる40分間を共に過ごせたことは、本当に幸運であったと思う。


矢継ぎ早に放たれるMCを支えるトラックは多種多様で洗練されており、LIVE DJのDYE氏に

よる手さばきも、この手の音に対する音楽的語彙を持たない私が言うのもなんだが、BOSS氏

というMCの事を誰よりも理解していないと出来ない芸当であるのだなと感じた。トラックを

作っているメンバーとライヴにおけるDJが違う、という彼ら独自のスタイルも、ちゃんと

意味があるものなのだな、と。

 

AFTER HOURSに参加できたことへの喜び、DJ KRUSH氏への熱い熱いリスペクト、己との

勝負、時に惨めだった過去も赤裸々に語り(時給650円のウェイター生活、サラ金でアルバム

製作費を賄ったこと等々)、成功した自分自身への冷徹な眼差し、永遠に変わらない地元愛

……強さも弱さも兼ね備えた45歳の男は、40分間の戦いを終えて、最後に「今日、俺たちを

睨み付けてくれた」観客に向けて、誠実な感謝を述べた。

 

"出来る奴ほど謙虚"という自身の言葉を地で行く姿に嘘偽り無し、である。

at 23:50, 某スタッフ, Music(Live Report)

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