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『ヴァンピアーズ』を読む。

 

 

少女同士の恋。吸血鬼。永遠の存在。

 

――このようなイメージが浮かぶ作品を目にしただけで、俄然興味が湧いてしまうような

人間(もちろん私も)からすれば、あざといほどの表紙、設定、帯の煽り文句であろう。

 

言うまでもなく、これらのイメージは漫画のみならず、映画や小説といった創作において、

何度となく使われているモチーフだ。古典的な小説作品であれば、ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュの

『カミーラ』があり、それを下敷きにしたロジェ・ヴァディムの映画『血とバラ』がある。

少しマイナーなものであれば、ジェス・フランコとソリダッド・ミランダ(ソルダード・ミランダ)のコンビ

が生み出した映画『ヴァンピロス・レスボス』があり、もっとアレな人であれば、取り憑かれたように

レズビアン(吸血鬼も含めて)物のエロティック・ホラー映画を作りまくった奇才、ジャン・ローランの

諸作品を思い出すかもしれない。

 

私が知らないだけで、アニメや漫画にもそういった作品はあるだろう。厳密に百合とは言えないが、

TV版の『吸血姫美夕』なんかも、後半以降と例のラスト・シーンに、そのような影が揺れているのだ。

 

とはいえ、私が適当に列挙した作品に通じるものがあるとすれば、それは耽美であるということだ。

種類は違えど、何処か破滅的なデカダンスが漂っていて、私のような人間を魅了してやまない重要な

要素と言えるだろう。

 

その点、『ヴァンピアーズ』にデカダンスの影は無い。いや、無いといってしまうと語弊があるかもしれない。

不死という性質から生じる悲哀は確実に存在しているし、そもそも吸血鬼という存在そのものが耽美的であり、

退廃的なイメージがある。それは読み手側の勝手な先入観とも言えるが、吸血鬼の――本作では吸血鬼ではなく

「リル」(ケルト神話に出てくる海神と同じ名前である)と呼ぶ――少女、アリアは人の血を吸う不死の存在

ではあるが、日の光に弱い、十字架に弱い云々といったヴァンパイアにありがちな弱点があるわけではない。

ないのだが、そもそも不死の存在が安寧の死を望む姿は、時代を超えて繰り返されるロマネスクである。

 

アリアに恋をするヒロイン、一花の祖母がどのような死を迎えたのかを聞かされたアリアの言葉を見るがいい。

 

「上手な死だ」

「羨ましいよ」

 

永遠に疲れ、死を望む少女。これぞデカダンスの極みと言いたいが、『ヴァンピアーズ』において、アリアが

死を望んでいるということは、もちろん作劇中の重要な要素ではあるけれど、いかにも現代的な、からりとした

ユーモアを持って描かれているところに、作品としての面白味を感じさせるのだ。

 

高貴な存在といったイメージもある吸血鬼を徹底的に滑稽に、ユーモラスに描写した『処女の生血』といった

映画を思い出すが、『ヴァンピアーズ』は基本的に恋愛コメディと言える作風である。主軸はあくまで、

非常に端正な美しい作画で描かれる、アリアと一花の関係性から生じるやり取りの妙であろう。深読みすれば

重いストーリーになってもおかしくないところだが、その辺りのバランス感覚が見事である。少女特有の、

暴走気味の感情が振りまく楽しさや可愛らしさ、愛らしさを堪能するだけで十二分に満足できるのだ。

 

四十面下げて美がどうとかデカダンスがどうとか語っている滑稽さはこの際無視して頂ければと思うが、

ともあれ、本来私が本作を手に取った際に抱いた期待とは違う作風であったにせよ、これは良いものだと

直感した自分のアンテナは、いまだに錆び付いてはいなかったらしい。ホッとした(笑)。

 

作者のアキリ氏は新人ではなく、軽く調べた限りでは豊富なキャリアの持ち主のようだ。詳しいことは

ここでは述べないが、ジャズ・ミュージシャンとしての顔を持つという異色の経歴が私の目を引いた。

道理で、『ヴァンピアーズ』にも音楽的なネタが転がっているわけだ。一花が持ってきたレコードが

『The Cannonball Adderley Sextet in New York』だったり、SP盤とかいう言葉が出たり。SP盤、

もはや私の古巣でも買い取ってくれないからなあ……。

 

 

一花とアリアを取り巻く他のキャラクターも魅力的だし、日常を描く時も、物語が大きく動き出しそうな時で

あっても、嫌味のないギャグ・センスでさらりと読めるのが良い。上述した音楽ネタも、これみよがしに

出てくるわけではないので、そういった要素が苦手という方でも安心して欲しいところ。

 

百合作品好きでなくとも、可憐な少女達が織り成す恋愛コメディ漫画として、大推薦の逸品である。

at 02:57, 某ライター, Book(Recommend/Free Talk)

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